sankakuyane
富山市の市街地には、古くからの都市計画の名残により、未だ狭小地や変形地が多くみられます。他方、住宅地の開発は郊外化が進み、地方都市特有の車依存の生活スタイルが加速しつつあります。本計画は市街地の三角地を有効活用して住まいを計画することを通して、富山独自の地方都市型ライフスタイルのあり方を模索することを目的とし、その実現するため、3つの建築的工夫を凝らしています。
1つめは、狭小三角地の面積的には限りがある中で、空間に広がりを持たせることです。建物は敷地いっぱいに、塀と外壁を兼ねたかたちで配置しました。内部空間は立体的に構成し、視覚的な「行き止まり」を無くし、端から端まで視線が抜けるよう配慮しています。敷地の大きさや狭さによるネガティブなイメージを視覚的効果によって払拭できればと考えました。
2つめは富山の気候・風土に合ったライフスタイルのための「屋外的空間」を空間に落とし込むことです。例えば冬の降雪時には欠かせない、屋根付きの駐車スペース、これらは一般的には「カーポート」を設置することで解決されてきました。富山の住まいのファサードの多くはカーポートによって支配されています。本計画では、建物の屋根を車1台分はね出すことで、明るく雪が積もらない空間を生み出しています。その他、風雨や黄砂、花粉を気にせず、よく乾く物干しスペースや、春・秋などの中間期に気持ちの良い外気を感じながら食事やバーベキューができるデッキスペースをもうけるなど、限られた敷地の中でも富山暮らしが豊かになる要素を散りばめています。
3つめは空気の流れをデザインすることです。都市部ではプライバシーを確保するため、建物はどうしても窓が少なく、閉鎖的なものとなりがちです。その中でも空気の流れを立体的に考えることで、冬場は室内にため込んだ暖かい空気を有効に活用し、夏場は室内に空気の流れを生み出すことでエアコンに頼らない、最小限の空調設備で生活することが可能なのではないかと考えました。
この住宅をきっかけに、富山でのライフスタイルの1つのかたちを提示し、より気軽にローコストでまちなか定住する人が増えることを願います。
U:個人住宅
S:富山県富山市
D:2019.1
C:米井建設
P:谷川 ヒロシ
凡例 U:USE/用途 S:SITE/場所 D:DATE/完成日 SC:SCALE/規模 A:Architect/意匠設計 SD:Structure Design/構造デザイン PP:Planting Plan/植栽計画 LP:Lighting Plan/照明計画 LD:Landscape Design/ランドスケープデザイン AD:Art Director/アートディレクター C:Constructor/施工会社 P:Photo/写真 CO:Collaboration/協力